映画・読書感想記事は基本的にネタバレです。ご注意ください。

2007年05月08日

「ロリータ」ナボコフ

「藍空放浪記」でも書いたが(以下の文章かなり重複している)毎日「ロリータ」を読んでいる。昔読んだのと違う新しい訳だが読みやすい。
少女にのみ本当の快楽を見出すハンバート・ハンバートの一人称からなるこの長編小説を何度も読み返してしまう面白さというのは何だろう。
ヨーロッパからアメリカへ来たこの中年男(と言ってさしつかえないだろう)は確かに可愛くはあるがやや蓮っ葉としか言いようのない少女に夢中になってしまう。
ハンバートが自分のすべての欲望を込めて呼ぶ「ロリータ」という少女(今では完全にイヤらしい名前と化してしまった。気の毒な)ドロレス・ヘイズが12歳から15歳くらいまでの性愛の物語である。

まず惹かれたのはロリータが普通かもしくはかなり意地悪で低俗な嗜好の持ち主であること。
ハンバート好みの小柄で細い肢体を持ち、彼の欲望を掻き立てながらも精神は崇高でも神秘的でもない。
ある意味、ハンバートはその絹のような手触りの細い体だけを欲しているのかと思えるのだが事実そのとおりであり、ロリータが15歳をこえると彼らの性愛の暮らしは終わりを告げる。その後、ロリータが別の男と結婚したりハンバートが犯罪を犯したりするが、これはロリータが成長してしまい話は終わった、ということにしか思えない。むしろ大きくなっても愛してる、と言いながら事実大きくなったロリータに同じ愛情を持つかといえばそんなことはないからで、そのことはハンバート自身が語っている。曰く「ロリータが娘を産み、その子が12歳になればまた同じように愛し、そのまた娘が12歳になる頃老人になった自分にもう一度チャンスが訪れる」と。
がそれは語られただけで小説の筋にはならなかった。
結末近くハンバートは大きくなったロリータへの愛情を盛んに口にするがそれはもう戻らない彼女への追従に過ぎないのだ。

多くの人は「1部は面白いが2部はつまらない」と思うらしい。自分的には2部の二人の北米放浪に興味を持った。
ここでハンバートはロリータに幾度となくセックスを求めている。中年男がどこにも行き場のない13歳の少女を連れまわし、その見返りに肉体を要求していくという怖ろしいストーリーだ。ハンバートはここでむしろユーモアを交えた軽みのある語り口をしているのだが、当のロリータがどのような気持ちでハンバートに抱かれていたかは描かれない。
二人の結末となるロリータの口調からしても彼女がハンバートを嫌っていたのは間違いないのである。単純に性交渉だけを求めるわけでなく体を撫で回すようなハンバートとの生活がロリータに心地よいわけもない。

小説は一人称で書かれているため、ふと疑問に思うこともある。ハンバートが嘘を書こうとすれば書けるのだ。無論、この方法がまかり通れば何を信じて小説を読んでいいかわからない。すべて嘘だと言ってしまえばお終いだ。
ただロリータの母親が突然死んでしまうところ、学校で演劇に夢中になっていたロリータが突然ハンバートに旅をしたいと言い出す場面は奇妙である。
物凄く勝手を言ってしまえばこの2箇所は後に手記をしたためたハンバートが巧妙に嘘を書いたのではないかと疑ってしまうのだ。

こう書いていっているとハンバートをただおぞましい変態だと言い立てているようだ。
何故こう書いたかと言うと、それにも拘らず、彼の書くロリータ像、ロリータへの賛美、ロリータとの生活が魅力的でまたロリータを最高とする少女愛の対象となる「ニンフェット」の定義、筋書きを彩っていく様々な知識と言葉遊びの楽しさが尽きないのだ。
あまり讃えすぎてハンバート自身に賛同しているかと言われれば女性としてロリータを単なる欲望の対象としてしか見ていない気持ち悪さは無視できない。
だがロリータが同じ少女趣味の男を好きになっているのにハンバートを愛する事はなかったことがこの小説の救いになっているとも思える。
時々ハンバートに騙され、ロリータに反感を覚えてハンバートに同情する人もいるがそんなことをする必要はない。
文章は素晴らしいがハンバートが愛しているのは10代前半の肉体を持つロリータなのであって彼は満足しているはずであり、大きくなったロリータと再び暮らすことになってしまったなら、ほどなく別の少女のスカートに顔をうずめに行ったはずなのだ。

後半、ロリータを本当に愛してしまったかのように書くハンバートの欺瞞とロリータがどう言われても戻らなかったことでむしろハンバートが年老いたロリータと暮らすことがない身勝手さを感じ、ますます巧妙な小説だと感心してしまうのだ。
タグ:ロリコン
posted by フェイユイ at 00:00| 香港 | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Tracked: 2007-07-27 23:06
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